揚げ物。

そういえば、ドラムを叩いてくれる正式なメンバーが決まった。
ベースさんが決まったら一緒にお知らせしようと思っていたけれど、なんとなくいまゆってみる。
男らしくてまっすぐで、不器用な感じがとてもいいドラマーです。ぼくの一つ年下です。イケメンです。いいよもうイケメンとか。
初めて会ったときは新宿駅の東口で待ち合わせしていて、ぼくは奈津子とふたりで行ったのだけれども、時間になっても連絡が来ない。連絡とっていざ会いに行ってみたらすっぽかされたり、スタジオまで決めたのに突然音信不通になったりは何回かあったので、そのときも『あ、またかー』くらいの気持ちで、ぼくらはタバコでも吸って帰ろうとした。そしたらメールが来て、戻ってみたらしゅっとしたイケメンがいてね。いいよもうイケメンとか。はっきり覚えてるなあ。会った瞬間彼は握手をしてきて、こう、一回普通に握手して、なんてゆうのかな、親指を軸にして手のひらを上に半回転させて、もいっかいぎゅってするかっこいいやつもした。どきっとした。
三人でマックに行って話をした。ぼくの曲の何が良くて連絡をくれたのか訊くと、うまくいえないけど全部っす、って言っていた。なんだよそれって思った。何人もそうやって会って話をしてきたけれど(15人くらい)、そういうとき、奈津子はあまりしゃべらずに黙ってぼくの言うことを聴いている。ぼくがひたすらしゃべる。偉そうにばんばんいろんなことをゆう。
さっそくスタジオに入ってみる。そのときは一緒に演奏するはずだったベースマンが連絡無しのドタキャンをした。よくあることとはいえ、このベースマンは一度会ったときになんだか盛り上がっちゃってうちまで連れてきたりしてたから少し悲しかった。結局三人で演奏してみて、それがとてもよかった。彼のドラムは、うまいとかそうゆうのじゃなくて、とっても彼らしいドラムだった。少し背伸びもするし、いまできることはめいっぱいする。もっとうまいドラマーはたくさんいるけれど、彼はこれから、『その人だけのドラム』みたいのを持ってる人になりそうな気がしたんだ。
もうこれは彼で決まりだね、って奈津子と話していたのだけれども、直後にもう一人一緒にやりたいってゆってくれた人がいて、その人とも合わせてみることにした。
そのひとがまたうまくて器用で、さっきの彼とはまた別の意味でとても良かった。即戦力を求めるなら彼だな、と、ぼくはとても迷った。
決めかねて、もう一度二人とスタジオに入ってみる。二時間づつでぼくと奈津子は立て続け四時間。その日初めて合わせてくれたベースマンもいきなり四時間。なんだか申し訳ないことしたなあ。
スタジオが終わっても相変わらずぼくは迷っていた。奈津子は最初の彼がいいといっていた。
それから一週間くらいいろんなことを考えて、ぼくは最初の彼にすることにした。二番目の彼もよかった。でもほんとうにいろんなことを考えて、彼にした。ここに事細かに書くことはどうかと思うので二人のドラムのそうゆうところは書かないけれど、本当に二人ともよかったんだ。大変だった。どっちか一人を選ぶのはとっても難しかった。

最初の彼って呼ぶのが面倒くさくなってきたから、冬木くんで。彼は冬木くんっていいます。冬木くんに『待たせてごめん、一緒にやってもらいたいです』ってメールを送ったとき、ぼくらはずいぶん待たせていたのに、冬木くんは気持ちよく『その言葉を待ってました』ってゆってくれた。ぼくは『何年一緒にやるかわからないけど、よろしくね』ってゆった。冬木くんは気持ちのいいことしかゆわない。ぼくみたいな面倒くさいことは、あんまりゆわない。
東京来てこんなすぐ、彼みたいなひとに出会えたぼくは、とてもついている。しっかり曲を書かなきゃなあ。冬木くんやもちろん奈津子が打ち震えるようないい曲を、ぼくは書くよ。
ぼくはなんでもないどこにでもいる普通の人間だけれども、なにかすごいことができるって、月並みだけれども本気で思っている。


聴いた音楽をいろいろ載っけたりしていたけれど、うさんくさいので一曲づつ紹介することにしました。
やめようと思ったけれど、知らない人に聴いてほしい音楽ってやっぱりあるもんなあ。


♪ All The Dark Horses/Trashcan Sinatras

Weightlifting (W/Dvd) (Dlx)

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